目次
左官材 —— 砂と砂利のはなし
いつもお世話になっております。受付の窓際席の人です。🖋
今回は、私たちが日々お取り扱いしている建材の中から「左官(さかん)」という仕事と、その現場で使われる骨材4種——川砂(中目)・細目砂・川砂利(8分)・ビリジャリ(3分)——についてご紹介します。
「砂や砂利って、一言に言って何が違うの?」という方にも、お伝えできればと思います。
そもそも「左官」ってどんな仕事?
左官(さかん)とは、鏝(こて)を使って建物の壁・床・天井・土間など材料を塗り仕上げる職人のことです。漆喰(しっくい)や珪藻土、モルタル、セメントなど、さまざまな材料を組み合わせながら、下地づくりから仕上げまでを一手に担います。

縄文時代から続く歴史
左官の起源は、なんと縄文時代にまで遡るとされています。竪穴式住居の壁に土を塗り固めた作業が始まりと考えられており、飛鳥時代には石灰を使った漆喰(しっくい)技術が伝来。そこから長い歴史を経て、日本の気候風土に合った技術へと大きく花開きました。
「左官」という名前の由来には諸説ありますが、宮廷の造営組織に関わる説が有力です。 たとえば、宮殿の建築や修理を担う「修理職(しゅりしき)」という組織において、大工(木工)を「右官」と呼んだのに対し、壁を塗る職人を「左官」と呼んだという説(右官の対として)。
他にも、奈良時代の「木工寮(もくりょう)」という宮廷組織の階級である「属(さかん)」が由来という説もあります。宮廷の壁塗りを担う職人に官職として与えられた名前が、そのまま職業の呼び名になり、のちに「左官」という漢字が定着したと言われています。
そんな長い歴史を持つ左官ですが、2020年には「伝統建築工匠の技:木造建造物を受け継ぐための伝統技術」がユネスコ無形文化遺産に登録され、この中に「左官(日本壁)」が含まれました。まさに、日本が世界に誇る伝統技術のひとつなのです。
左官職人の仕事は多岐にわたる
左官の仕事は「壁を塗るだけ」ではありません。
- 塗り壁仕上げ:漆喰・珪藻土・モルタルなどで壁の下地から仕上げまでを担当
- 床・土間仕上げ:コンクリートを平らに均し、排水溝へ微妙な勾配をつける繊細な作業
- タイル貼り・目地仕上げ:浴室やキッチンなど水回りのタイル施工
- ブロック積み・レンガ積み:塀や外構の施工
- 外壁補修・洗い出し仕上げ:建物の外観を美しく保つ補修作業
見た目を整えるだけでなく、断熱・調湿・防火といった機能面も担う、まさに縁の下の力持ちです。
左官道具の鏝(こて)とはどんな道具か
左官の象徴的な道具が「鏝(こて)」です。平たい金属板(鏝台)に木や樹脂の柄がついた道具で、材料を壁や床に塗り広げたり、押さえて仕上げたりするために使います。
現在、左官鏝の種類はおよそ350種といわれています。さらに大きな枠でいえば1,000種類以上あるとも言われ、素材・形状・サイズ・焼き入れの違いによって細分化されています。職人は何十本もの鏝を現場に持ち込み、塗る素材・場所・工程に応じて使い分けます。
代表的な鏝の種類

中塗鏝(なかぬりごて)は、土間鏝の中でも特によく使われているものです。鏝台の先が尖った形状をしており、中塗りから荒仕上げまで幅広く使われています。鉄・ステンレス・プラスチックとさまざまな素材の展開もあり、代表的なものです。
角鏝(かくごて)は、鏝台が平らで長方形になっており、持つと重みが感じられるのが特徴です。床面をはじめ平滑な広い面積の壁など、主に押さえ仕上げのときに使われています。
レンガ鏝は、葉っぱや桃のような特徴的な形をしています。レンガやブロックを積む作業に使われており、モルタルをすくう・かき混ぜる・塗る・ならすなど、あらゆる用途に使うことが可能です。
ブロック鏝は、細長い三角形の形状で、ブロックの穴にモルタルを流し込む時には鏝の先端が使えます。
面引鏝(めんびきごて)は、外側へVの字に曲がった鏝です。出隅(二つの壁が外向きに出合ってできる角の部分)の仕上げに使うもので、Vの字の部分はさまざまな角度のものが展開されています。逆に入隅の仕上げには「切付面引鏝(きりつけめんびきごて)」が使われます。
目地鏝(めじごて)は、タイルやレンガ、ブロックを施工する際の目地仕上げに使うもので、目地の太さに合わせてサイズを選びます。目地には細いものから太いものまで様々あるため、目地鏝も無数のサイズ展開があります。
柳刃鏝(やなぎばごて)は細かな作業に適しており、首が鏝の根元についていることから、狭い場所に鏝先を運ぶことができるのも特徴で、手の届きにくいところへの施工にも活用します。
土間鏝はその名の通り土間を仕上げる作業で使い、コンクリートを平らにならすため、強硬で厚みもあります。
木鏝(きごて)は素材が木でできた鏝で、ヒノキでできたものが多く、材料が付着して垂れにくいメリットから、漆喰など壁土を塗る際におすすめです。床にコンクリートを施す時に使うと、砂利が沈んで綺麗な仕上がりに期待できるのも木でできた鏝ならではです。
ゴム鏝は、鏝台がゴム製の鏝で、タイルの目地埋めにゴム鏝を使うと、タイルを傷つける心配なく作業が進められます。
鏝の材質と「焼き」の違い
鏝の材質は、大きく分けて「鋼(はがね)」と「ステンレス」があります。初心者が扱いやすいのは、錆びにくく手入れが簡単なステンレス製の鏝です。とはいえ多くの熟練職人が最終的に行き着くのは鋼の鏝で、ステンレスにはない絶妙な”しなり”と、材料への”食いつき”の良さがあるそうです。
鉄の鏝は焼きつけ方によって硬さが変わり、硬い順に「本焼」「油焼」「半焼」「地金」と区別されます。本焼は最も硬く、セメントや石膏などに使われます。油焼は中塗りにも仕上げにも使われる塗りやすい鏝で、現場で最もよく使われるのがこの油焼です。
鏝が生んだ芸術 ——「鏝絵(こてえ)」
鏝は仕上げ道具にとどまらず、芸術の域にまで高められた歴史があります。鏝絵は江戸時代中期に始まった漆喰装飾の一種で、静岡県松崎町出身の左官職人・入江長八(いりえちょうはち)が芸術の域にまで大成させたとされます。
長八は天保12年(1841年)、江戸・日本橋茅場町にあった薬師堂の御拝柱の左右に「昇り竜」と「下り竜」を造り上げて名工として名を馳せ、のちに明治の内国勧業博覧会にも出展するほどの名声を得ました。その超絶技巧は「鑑賞に拡大鏡が必要なほど緻密だ」とも評されています。
鏝絵の技は現在も受け継がれており、静岡県松崎町には「伊豆の長八美術館」があります。左官職人の道具から生まれた芸術として、今も注目を集めています。
左官職人は今、危機的な状況にある
建設経済研究所の推計では、左官職人の数は過去20年で約4割も減少しており、平均年齢が55歳以上に達しています。工期短縮を優先する流れや、クロス・サイディングなど乾式工法の普及、若手のなり手不足などが重なっています。
その一方で、自然素材ブームやシックハウス症候群への関心の高まりから、漆喰・珪藻土・モルタルなど左官仕上げの価値は再評価される場合もあります。歴史的建造物の修復や、こだわりのある注文デザインでは、熟練した左官職人の技は他の工法では代替できません。
骨材たち —— 砂と砂利
左官工事でモルタルや漆喰を作るとき、欠かせないのが骨材(こつざい)—— 砂や砂利のことです。骨材は仕上がりの品質に直結するため、用途に応じた使い分けが重要です。

① 川砂(中目)
川砂とは、河川から採取されてふるいにかけた砂です。粒が流水で丸く磨かれているため、鏝(こて)の伸びが良く、塗り壁に向いているのが特徴です。
川砂は粒の大きさで「粗目・中目・細目」に分かれますが、「中目(ちゅうめ)」は粒径最大粒径2.5mm程度。壁塗りに最適なサイズで、コテさばきが滑らかになることから「左官砂(さかんすな)」とも呼ばれています。
② 川砂利(8分)
川砂利は、砂より粒が大きい石の集合体で、コンクリートの粗骨材(あらこつざい)として使われます。砂(細骨材)・セメント・水と組み合わせることで、コンクリートに強度と体積を与えます。
「8分」って何mm?——尺貫法の豆知識
川砂利のサイズ表記「8分(はちぶ)」は、日本の伝統的な単位系である尺貫法(しゃっかんほう)が由来です。以前に記事でまとめた件ですね。
尺貫法では1分(ぶ)=約3mm。したがって
- 8分 = 約24mm(8×3mm)
- 3分 = 約9mm(3×3mm)
メートル法が法律上は1959年(昭和34年)に廃止されたにもかかわらず、建材業界では今もこの「分」が現役で使われています。「8分の玉砂利」「3分のビリ砂利」という呼び方は、職人さんや建材屋さんの間では今も当たり前の共通言語です。
川砂利の「8分(約24mm)」は、コンクリートの粗骨材として標準的なサイズで、骨格となる役割を担います。砂利があることでコンクリートに強度が生まれるのです。
「川砂利」という名前だけど——採取規制の歴史
少し寄り道をします。「川砂利」という名称なのに、川から採るのは違法と聞いたことがある方もいるかもしれません。
実はこれ、歴史的な経緯があります。戦後の高度経済成長期(1950〜60年代)、建設ラッシュに伴う砂利需要が急増し、多摩川・荒川など大都市近郊の河川で川砂利の乱掘が進みました。その結果、河床が掘り下がって護岸の崩壊や橋梁基礎の洗掘などが相次ぎ、1960年代末には主要河川での採取が原則禁止されました(砂利採取法の全面改正は1968年)。
それ以降、川砂利に代わって台頭したのが砕石(岩を機械で砕いて作った石)と陸砂利です。現在「砂利」として流通しているものの多くは、川砂利に近い形状・粒度に整えた砕石系の骨材や、河川法の適用外の場所から採取したものが使われています。「川砂利」は今や品質・形状の特徴を示す呼称として定着しているわけです。
③ ビリジャリ(3分)
ビリジャリ(3分砂利)は、砂利の中でも小粒なサイズの砂利です。「3分(さんぶ)」は上述の尺貫法で約9mm前後の粒を指します。
「ビリ」という名前の由来も所説あります。岩を砕いて大きな砕石を生産する際に、最後に残る最も小さな粒を集めたものという説があるそうです。「ビリ=最後」といいますが、mm数を少なくする必要があるので細かい材料は生産に手がかかっている様です。
現在の「川砂利」と同じく、河川法の規制もあり、流通しているビリジャリも砕石を小粒に加工したものが主流です。
粒が小粒で程よい丸みを帯びているため踏み心地が良く、和風の露地(茶庭)や一般の庭にも使われる一方、コンクリートの骨材や下地材としても活躍する、懐の深い材料です。
④ 細目砂(ほそめすな)
川砂の種類の中で、中目よりもさらに粒が細かいのが細目砂(ほそめすな)です。粒径の目安は0.6mm以下で、手に取るとサラサラとした感触で、粒ひとつひとつが非常に小さくそろっています。
中目砂が「左官砂」と呼ばれるほど塗り壁向きなのに対し、細目砂は固まりにくく、柔らかくふかふかした質感を保つという特徴があります。この特性が、建設現場より、むしろ暮らしに身近な場所での活躍に向いています。
砂場・グラウンド・ゴルフ場に
細目砂のもっともよく知られた用途のひとつが、学校や公園の砂場です。粒が細かくサラサラしているため、子どもたちが砂遊びをするのに適しており、手や目に入っても粗い砂ほど刺激がありません。また、固まりにくいという性質上、砂場の砂として長期間使い続けられます。
同じ理由から、野球のグラウンドやゴルフ場の砂としても使われています。スポーツ施設での砂は、均一な粒のそろいと水はけのバランスが求められるため、細目砂の特性がよく合います。
芝生の目砂(めすな)にも
庭の芝生管理で使われる「目砂入れ」という作業があります。芝生の根元に薄く砂を入れることで、芝生の凹凸を補正し、根の張りを促す効果があります。この目砂にも、粒が細かく芝の葉や根の隙間に入りやすい細目砂が適しています。
建設現場でも使われることはある
左官・建設現場での使用は中目砂に比べると少ないものの、コンクリートやモルタルの細骨材として配合されることもあります。粒が非常に細かいため、仕上げの表面をより滑らかにしたい場合や、目地など狭い部分への充填に使われたりします。
ただし粒が細かすぎると水分が抜けにくく、モルタルの乾燥・固化に時間がかかりやすいこともあるため、左官仕上げには中目砂のほうが適している場合がほとんどです。砂の目の細かさと用途のマッチングが大事というわけです。
モルタルとコンクリート
骨材の話に入る前に、「モルタル」と「コンクリート」ってどう違う?という疑問を整理しておきましょう。
その違いは骨材の種類にあります。
| 材料 | 構成 | 用途の例 |
|---|---|---|
| モルタル | セメント+砂(細骨材)+水 | 壁塗り・タイル下地・目地 |
| コンクリート | セメント+砂(細骨材)+砂利(粗骨材)+水 | 基礎・土間・構造体 |
モルタルは砂だけを使うため粒が細かく、コテで平らに塗り広げやすいのが特徴です。左官の塗り壁や仕上げに使われます。コンクリートには砂利も加えるため、強度と体積が増し、建物の基礎や構造に使われます。
砂の粒の大きさや種類が仕上がりに直接影響するため、職人さんは質にこだわります。
まとめ —— 砂と砂利と言っても「用途による」
| 品名 | 粒径の目安 | 主な用途 |
|---|---|---|
| 川砂(中目)・ふるい砂 | 2.5〜3.0mm以下 | 左官・モルタル・タイル下地 |
| 細目砂 | 0.6mm以下 | 砂場・グラウンド・芝生の目砂 |
| 川砂利(8分) | 約24mm前後 | コンクリート粗骨材・基礎工事 |
| ビリジャリ(3分) | 約9mm前後 | 敷砂利・庭・下地・骨材 |
左官材料や道具を取り扱っておりますが、職人さんによって「好み」は本当に様々です。同じ中目砂でも産地による粒度によって鏝離れや仕上がりが変わるため、用途に応じた材料選びが重要になります。
平野建材では、左官・外構・土木現場に必要な骨材を取り揃えております。ご用命御座いましたら、是非お問い合わせくださいませ。
📞 お問い合わせはこちら
平野建材株式会社
〒180-0021 東京都武蔵野市桜堤3-23-2
TEL: 0422-52-4735
お問い合わせフォーム
執筆:受付の窓際席の人 🖋